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リニエ家の世代交代

2008-06-16

Category : 未分類

モレ・サン・ドニを代表するドメーヌのひとつ、「ユベール・リニエ」の当主ロマン・リニエが2004年に37歳の若さで帰らぬ人となったことに端を発したこのドメーヌの世代交代は、その父ユベール・リニエと、2人の子供とともに後に残された妻ケレン・リニエとの嫁舅の確執を伴うドラマティックなものとなりました。

夫であると同時にワイン造りの師でもあったロマンの遺志によってドメーヌの運営を託されたケレンは、「あの人の夢と志を、子供たちに引き継ぎたい」という一心であらゆる確執を乗り越え、自らワイン造りの修行を重ね、2006年、2人の子供の名前を冠した「リュシー・エ・オーギュスト・リニエ」への社名変更とともに、世代交代を見事に完了させました。

 

 

 

彼女いわく、「娘のリュシーはかなりやんちゃだけど、弟思いのしっかり屋さんです。息子のオーギュストは夫に似て頑固。自分の考えを曲げないわね。2人とももう収穫を手伝ってくれています」。

 

嫁舅の問題もそうですが、ケレンがさらに苦労している点は、アメリカ人であるということです。ブルゴーニュの、特に年配の世代はまだまだ外国人に対してかなり閉鎖的で、私自身もジュヴレ駐在時代はいろいろと不愉快なことも経験しましたし、もはやほとんどブルゴーニュ人と化した(?)仲田さんでさえ、今でも外国人であるがゆえの大変な苦労をされています。(詳しくは仲田さんに怒られますので書きませんが、一緒に飲んでひとり3本目のワインが空になる頃、少しだけ愚痴を聞くことができます)。しかし日本人はまだいいほうで、ケレンの場合は、いろいろな意味で何かとフランスと問題になっているアメリカですので・・・。

 

私事ですが、ケレンとは年が同じで、誕生日も1ヶ月しか離れていません。小さい子供がいる立場としても、また、ブルゴーニュに関わる外国人という立場としても、彼女の苦労の何分の一かは理解できるような気がして、ヴィニュロンヌとバイヤーという関係以前に、同世代の人間として強い共感を感じています。

もちろん、醸造家としての彼女の腕前の方も、プロとして十二分に信頼しています。

 

彼女とそのワインに関心を持っていただける方のために、リニエ家の世代交代にともなう一連の出来事やワイン造りの詳細について、やや専門的になりますが、以下に整理しておきます。(2008年6月改訂版)

 

主な関係者
★ Hubert Lignier(ユベール・リニエ)・・・一代でブルゴーニュを代表する生産者となったリニエ家当主。2008年6月現在74歳
★ Romain Lignier(ロマン・リニエ)・・・ユベールの3人の子供のうちの末っ子。1996年頃からドメーヌ継承開始。2004年に脳腫瘍で他界
★ Laurent Lignier(ローラン・リニエ)・・・ユベールの3人の子供のうちの長男。アルベール・ビショ社ディレクター
★ Kellen Lawton(ケレン・ロートン)・・・アメリカ人。1999年にロマンと結婚してケレン・リニエとなる。1973年3月25日生まれ
★ Bill Downie(ビル・ダウニー)・・・オーストラリア人。ヤラ・バレーの「デ・ボルトーリ」の製造部長
★ Dominique Poirotte(ドミニク・ポワロット)・・・2004年からユベール・リニエの栽培長。2002年~2004年までラ・プス・ドール栽培長も務めた、この道25年以上の名人。醸造にも明るい
★ Lucie Lignier(リュシー・リニエ)・・・2000年に生まれたロマンとケレンの長女
★ Auguste Lignier(オーギュスト・リニエ)・・・2002年に生まれたロマンとケレンの長男

 

出来事

1996年
○  ユベールからロマンへの相続を開始するため、EARL Hubert Lignierという会社を設立。社長はロマンで、株主はロマン74%、ユベール13%、フランソワーズ(ユベールの妻)13%
○  畑の総面積は約8.4haで、うち約6haはユベールがEARL Hubert Lignierにメテイヤージュ賃貸(収穫の3分の1相当分をユベールに地代として現物返済する契約)、約1.5haはロマンが所有、約1haは第三者所有畑をメテイヤージュで賃借

 

1999年
○  ロマンとケレンが結婚し、ケレン、ブルゴーニュに来る。ケレン、ロマンから栽培と醸造を学ぶ

 

2000年~2002年
○ ケレン、ロマンから栽培と醸造を学ぶ
○ 2000年、リュシー誕生
○ 2002年、オーギュスト誕生

 

2003年
○  ロマン、1月にEARL Hubert Lignier社のユベールとフランソワーズ持ち分の株式を譲り受け、100%継承完了
○  ユベール、3月に老後資金の安定調達のための販売会社SARL Lignier-Lawtonを設立。株主はユベール99%、ケレン1%でケレンを社長にする。EARL Hubert Lignierの造るすべてのワインをこの販社を通じて販売することを意図するが失敗。ケレン、ユベールに対する不信感が芽生える
○  ロマン、収穫期に脳腫瘍で倒れる
○  ケレンとその子供たち、ロマン所有の1.5haを相続(結婚する時にロマンは、万一彼に何かあった場合、すべてをケレン(と将来の子供たち)が相続できるように、フランス法上の特別な結婚形態を選んだ)

 

2004年 
○  ロマン、2月に帰らぬ人となる。享年34歳
○  ケレン、ボーヌの醸造学校CFPPAのBPREA(栽培・醸造コース)を修了
○  栽培長としてドミニク・ポワロット入社
○  醸造家としてビル・ダウニー招聘

(この年のワイン造り)
○ 栽培はユベール・リニエ、ドミニク・ポワロット
○ 醸造はユベール・リニエ、ビル・ダウニー、ケレン・リニエ
○ 熟成・ビン詰めはケレン・リニエ

 

2005年
○ ケレン、DRCとアンヌ・グロで収穫や発酵・醸造の短期研修
○  ケレン、12月にEARL Hubert Lignier社の社長に就任。ユベールが猛反対し、これを巡ってユベールとケレンの確執が表面化。長年ユベールと一緒に働いていた秘書等4人の従業員もケレンに抗議の退社
○  ドミニク・ポワロット、ケレン支持を表明。以降のケレンにとって大きな支えとなる
○  ビル・ダウニー、この年の醸造を最後に招聘終了

(この年のワイン造り)
○  栽培はユベール・リニエ、ドミニク・ポワロット
○  醸造はユベール・リニエ、ドミニク・ポワロット、ビル・ダウニー (ケレン・リニエは醸造方針の話し合いに参加したのみ)
○  熟成・ビン詰めはケレン・リニエ、ドミニク・ポワロット (ユベール分のワインはユベールがビン詰め)

 

 

 ドミニク・ポワロットとケレン・リニエ

 

2006年
○  ケレン、5月に販社SARL Lignier-Lawton社長を辞任。ローランがアルベール・ビショ社ディレクター兼務で社長となり、SARL Hubert Lignier Père et Filsに社名変更。以降、ネゴシアンブランド管理会社的な位置付けとなる

(この年のワイン造り)
○  栽培からビン詰めまで、すべてケレン・リニエとドミニク・ポワロット(ユベール分のワインはユベールがビン詰め)

 

2007年
○  ケレン、1月にEARL Hubert LignierをEARL Lucie et Auguste Lignierに社名変更
○  4月、新ラベル完成し、リリース開始

 

今日の畑について

畑の総面積は約8.4ha。うち約6haは変わらずユベールの所有で、社名変更したEARL Lucie et Auguste Lignierにメテイヤージュ賃貸(収穫の3分の1相当分をユベールに地代として現物返済する契約)です。この契約は2020年まで有効です。約1.5haはロマンから相続したケレンの自社畑。約1haは第三者所有畑をメテイヤージュで賃借しています。

 

<畑の面積と所有者>

Bourgogne Aligoté (0.59ha) ・・・Hubert Lignier
Bourgogne Passetoutgrains (0.56ha) ・・・Hubert Lignier
Bourgogne Pinot Noir (0.65ha) ・・・Hubert Lignier
Fixin Chardonnay Champs de Vosger (0.24ha) ・・・第三者
Gevrey-Chambertin Les Seuvrées (1.02ha) ・・・Hubert Lignier
Gevrey- Chambertin 1er Cru Aux Combottes (0.13ha) ・・・第三者
Charmes- Chambertin (0.08ha) ・・・Hubert Lignier
Morey-St.-Denis (0.95ha) ・・・Hubert Lignier
Morey-St.-Denis Les Sionnières (1.11ha) ・・・L&A Lignier
Morey-St.-Denis 1er Cru Cuvée Romain Lignier (0.53ha) ・・・Hubert Lignier
Morey-St.-Denis 1er Cru Les Chaffots (0.60ha) ・・・Hubert Lignier、L&A Lignier
Morey-St.-Denis 1er Cru La Riotte (0.15ha) ・・・L&A Lignier
Clos de la Roche (1.10ha) ・・・Hubert Lignier、L&A Lignier、第三者
Chambolle-Musigny Les Bussières (0.49ha) ・・・Hubert Lignier
Chambolle-Musigny 1er Cru Les Baudes (0.17ha) ・・・Hubert Lignier

 
バックヴィンテージについて

1998年からのバックヴィンテージについて、その所有者は、3分の1がユベール、3分の2がケレンとなります。上記1996年の下線部分をご参照ください。この中にあるユベールとのメテイヤージュ契約によって、1996年以降のヴィンテージはすべてこの比率で配分されました。2003年、ロマンがそれまで保有していたこれらの在庫が、ケレンに相続された次第です。

私たちがご紹介するLucie et Auguste Lignierラベルもののうち、1998年~2004年ヴィンテージのすべてのワインのコルクには、Hubert Lignierの刻印があります。2005年ヴィンテージより、刻印もLucie et Auguste Lignierとなります。